頭痛患者は、約840万人いるといわれ、そのうちの約8割が女性。頭痛もちの女性のうち、生理前に頭痛があるの人の割合は、約6割から7割を占めています。生理前や排卵日前後に頭痛がおこりやすくなる頭痛の種類と、原因を探ります。
生理前や排卵日前後におこりやすい種類の頭痛
生理前や排卵日付近におきやすいのは、偏頭痛と呼ばれるタイプの頭痛。頭の片側、もしくは両側が脈打つようにズキズキすると痛む頭痛で、吐き気や嘔吐がある人もいます。偏頭痛は、30代から40代の女性に多く、偏頭痛のある人の割合は、18.4%を占めます。
痛みがある時は、光や音、臭いに非常に敏感になり、少しでも動くと痛みが強くなります。カーテンを占めた静かで暗い部屋で、横になって安静にしている人が多いようです。
「片」頭痛という名前から、頭の片側だけが痛む頭痛だと勘違いしやすいのですが、痛むのは片側だけに限りません。統計によると、頭の両側が痛む人は、偏頭痛病患者の約4割に上ります。またズキズキとした痛みとは異なる痛みを感じる人も、約5割に上ります。
生理前や排卵日前後の頭痛の原因は、女性ホルモンのエストロゲン
頭痛もちの女性の約6割~7割が生理前や排卵日前後に頭痛あるとの調査結果があります。中でも排卵日付近と、月経の2日前から月経開始後3日目までの6日間に頭痛の発生が集中しています。これは、女性ホルモンのエストロゲンの大きな変動が影響しています。
月経周期の14日目頃の排卵日前日、女性ホルモンのエストロゲンが急上昇して急降下します。エストロゲンが上昇する時、脳の血管は収縮し、エストロゲンが減少する時には、脳の血管が拡張して、頭痛を引き起こすと考えられています。
エストロゲンは排卵日後から生理にかけてゆるやかに上昇を続け、月経が近くなると減少していきます。エストロゲンが減少する時、脳の血管が拡がり、頭痛がおこることがあります。生理の2日前くらいから、生理開始後の3日までの6日間は頭痛がおこりやすくなります。
セロトニンの働きで、頭痛がおこる
脳内の神経伝達物質のセロトニンの働きにより頭痛がおこる場合があります。セロトニンが上昇した時に、脳の血管は収縮し、セロトニンが減少すると、脳の血管は拡張します。脳の血管が拡張した時に、偏頭痛が起こります。
近年女性ホルモンの変動が、セロトニンの活性に影響を与え、様々な月経前症候群(PMS)の症状を引き起こしていると考えられています。
セロトニンに関連している頭痛は、頭痛の前に閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、キラキラと光が見える前兆がおこるのと、腹痛や吐き気が伴うのが特徴です。
吐き気を伴う頭痛
セロトニンが影響して頭痛がおこっている場合は、吐き気や腹痛を伴うことがあります。
セロトニンは神経伝達物質で、血小板と小腸に多く存在し、腸の働きに大きく関与しています。腸内のセロトニンが過剰になると、腸が強い収縮と弛緩を繰り返して、吐き気やおう吐、腹痛、下痢などがおこることがあります。
» 生理前には、吐き気が…。頭痛を伴うことも。原因と対処法とは?
マグネシウムは、頭痛の予防に効果的
イタリアで行われた臨床実験において、継続的なマグネシウムの摂取が、生理前の頭痛の予防に効果があるとの結果がでています。マグネシウムは、頭痛の緩和につながる可能性のあるミネラルと考えられています。
マグネシウムは、体内の代謝(体内での物質の処理)に不可欠なミネラルで、脳の神経を安定させる働きがあります。また頭痛もちの人には、血中のマグネシウムが不足しているともいわれているので、積極的に摂取したいミネラルです。
マグネシウムが不足すると、脳の神経が不安定な状態になり、痛みに敏感になります。そのことが頭痛と関連があるのではないかと考えられています。
低用量ピルは頭痛を悪化させてしまう
低用量ピルは、月経前症候群(PMS)の様々な症状の治療に有効ですが、排卵の時や生理前に頭痛がある人は、低用量ピルの服用には注意が必要です。ピルに含まれるエストロゲンにより頭痛が悪化してしまうからです。
生理前に頭痛がある人は、低用量ピルの服用には控えたほうがよいでしょう。
市販の頭痛薬を使い続けるのはNG。頭痛外来などの診察を受けて適切な治療を
頭痛の症状が非常に強い場合は、頭痛外来等での診察を受診をおすすめします。市販の頭痛薬を長期間服用しすぎると、「薬物乱用頭痛」という、頭痛薬が原因での頭痛がおこりやすくなってしまう心配があります。
頭痛の専門医のところでは薬物乱用頭痛になりにくく、副作用も少ない、片頭痛に非常に効果のあるトリプタン製剤や頭痛の予防薬を処方してもらえます。頭痛は、時に本当につらいものです。長年の頭痛を体質だとあきらめたり、痛みを我慢したり、市販の頭痛薬を飲み続けたりせずに、専門の医師のもとでの治療をおすすめします。