月経前の強いイライラや気分の落ち込み、寝ても寝ても日中起きていられないほどの強い眠気、また反対に夜眠れない不眠などで、家事や仕事などの日常生活に支障がでるほど強い精神症状がでる場合は、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。PMDDは、月経前症候群(PMS)の2~10%に見られるといわれ、精神科で診断と治療が行われます。
月経前症候群(PMS)は月経のある女性の約8割に見られる不調
生理前、月経前にイライラしたり、強い眠気に悩まされたり、いつもより食欲が増して、特に甘いものが無性に食べたくなったり、頭痛や腹痛がしたり・・・といった症状は、女性の約8割にあるといわれ、月経前症候群(PMS)と呼ばれています。
月経前症候群(PMS)の症状は200~300あるといわれ、月経前、生理前の特に約3日~10日間に症状が強く表れ、月経、生理が始まると症状は急速に軽減・消失します。数ある症状の中でも、最も多いのがイライラで身体症状よりも精神症状を感じる人が多く、以前は月経前緊張症と呼ばれていました。
原因は諸説ありまだはっきりと解明されていませんが、生理前、月経前の女性ホルモンの急激な変動が自律神経に影響を与え、様々な不調につながっているという説と、女性ホルモンの変動が、脳の神経伝達物質のセロトニンの活性に影響し、イライラなどの精神症状につながっているという説の2つの説が有力と考えられています。
月経前不快気分障害(PMDD)は、月経前症候群(PMS)の症状の中でも精神症状がうつ病に匹敵する程非常に重い状態
生理前、月経前に現れるイライラや気分の落ち込み、攻撃性、寝ても寝ても一日中眠い、普段は普通にできることができなくなってしまう等の精神症状が非常に強く、うつ病に匹敵するほどであり、家事や仕事などの日常生活に重大な支障が出る場合は、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。
月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder, PMDD)は、月経前症候群(PMS)の2~10%に見られ、生理前、月経前の精神症状がうつ病に匹敵する程の重さで日常の生活や活動に大きな支障がでます。以前は、黄体期後期の不機嫌性障害(LLPDD)と呼ばれていましたが、1994年以降は、PMDDという呼び方に統一されました。
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の治療
月経前症候群(PMS)の場合、投薬による治療が必要となるケースは3~7%程度と言われ、大半は食生活の改善や、サプリメントの摂取、日常生活でリラクゼーション活動を取り入れる等で対処するケースが多いです。投薬による治療では、漢方、ピル、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が使われます。
一方月経前不快気分障害(PMDD)は、精神症状が日常の生活や活動に支障が出るほど強いことや、月経前不快気分障害(PMDD)の女性は、うつ病になる可能性が高いとされているため、治療が必要になります。また最近の研究では、月経前不快気分障害(PMDD)の女性は産後発症のうつ病にかかりやすいことが分かってきています。
PMDDの治療では、世界的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が使われていて、月経前症候群(PMS)でも特に精神症状が強い場合にも用いられています。月経前症候群(PMS)の治療に使われている漢方やピルなどもある程度は月経前不快気分障害(PMDD)に効果があるとされていますが、メインの治療法ではありません。
月経前症候群(PMS)に比べて、月経前不快気分障害(PMDD)の認識は医師の間でもまだ低く、月経前不快気分障害(PMDD)の患者さんの中にも月経前症候群(PMS)と診断されて、治療が行われていないケースもあるといいます。
月経前不快気分障害(PMDD)の可能性がある場合は精神科へ
PMDDの症状とチェックのページで、自分が月経前不快気分障害(PMDD)かもしれないと思った場合は、婦人科よりも精神科で診察、治療をうけるとよいでしょう。
月経前不快気分障害(PMDD)は精神症状が主体で、国際的にはうつ病の一種と位置付けられています。PMDDの診断と治療には、抑うつ気分や不安などの精神症状の程度をきちんと評価できる精神科の専門医が適しています。
月経前不快気分障害(PMDD)と症状が似ている病気には、気分変調性障害やうつ病や躁うつ病、パニック障害、統合失調症等の精神疾患があります。これらの病気は、生理前、月経前に症状が悪化することが知られていて、PMDDと勘違いしやすいため、自分ではPMDDだと思っていても、実はほかの病気だったというケースもありますので、精神科の専門医を受診をおすすめします。
月経前不快気分障害(PMDD)の治療には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ剤が用いられます。症状により、症状が出ているときだけ服用するのか、またはずっと服用するのか、といった薬を服用する期間パターンと、適切な薬の量を見極める必要があります。抗うつ剤の処方については、婦人科の医師よりも精神科の医師が慣れていると言えます。月経前不快気分障害(PMDD)の治療についての詳細は、こちらのページをご覧下さい。
さらに、婦人科で月経前症候群(PMS)の診療に用いられている、「産婦人科 診療ガイドライン-婦人科外来編2011」にも、精神症状の強い時は、精神科や心療内科への紹介を考慮するとあります。これらの理由から、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性がある場合は、精神科を受診するとよいでしょう。