昔から「漢方薬は女性の味方」といわれており、月経前症候群(PMS)の治療にも、漢方は幅広く取り入れられています。月経前症候群(PMS)の他にも漢方は、女性特有の症状の治療の得意分野とされ、90%以上の婦人科において漢方での治療が取り入れられています。
漢方は、「これくらいなら…」と我慢してしまいがちな、ちょっとした不調や複数の症状にも有効
イライラや頭痛、むくみなどの症状があって、病院で血液検査やレントゲンなどで調べてもらって、異常なしとの診断。安心したものの、依然として症状があって、不調を我慢している…。また西洋医学では病気としてとらえられない「冷え」などの不定愁訴と呼ばれる不調がある…。そんな女性に、漢方は大変効果があります。
月経前症候群(PMS)は、子宮や卵巣といった器官の異常によるものでなく、女性ホルモンの正常な増減が原因でおこるとされています。西洋医学は、器官の異常の治療は得意ですが、月経前症候群(PMS)のように、器官の異常によるものではない症状の治療はあまり得意でないともいえます。一方漢方は、月経前症候群(PMS)をはじめ、女性特有の症状の治療に広く取り入れられて、効果を上げています。
漢方医学には、心と体が互いに影響を与えているという「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。また病気だけを見てアプローチするのではなく、病気を抱えている体全体にアプローチします。「これくらいなら…」とか、「検査で異常はなかったから…」とあきらめていた不調や症状を漢方薬で体全体のバランスを整えて、不調や症状を解消していくことができます。
1つの漢方薬には複数の生薬が配合されています。そのため1つの漢方で複数の症状に複合的にアプローチして解消することができることも、漢方の特長です。
月経前症候群(PMS)の症状は、200~300もあるといわれ、1つだけではなく複数の症状を抱えている女性も少なくありません。1つ1つの症状はそんなに強くないけれど、様々な不調が生理前に重なり、結果として大きな不調に陥っているという女性に漢方は非常に有効です。
漢方は妊娠を希望している場合や、妊娠中、授乳中でも服用が可能なことも
漢方の中には、妊娠中や授乳中でも服用できるものがあります。また、「母子同服」といって、お母さんとこどもが同じ漢方を服用することで、夜泣きをするこどもと、それが原因でイライラするお母さんが2人とも症状が改善するということもあります。
ただし妊娠中、授乳中の漢方薬は、必ずお医者さんに相談して処方してもらいましょう。
漢方の入手方法
漢方は、ドラッグストアなどで購入できます。漢方は症状だけでなく体質(証:しょう)にあったものを選ぶのがポイント。医師や専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
最近は、「漢方外来」や「東洋医学科」などを設置する病院も増えてきました。婦人科の90%以上でも、治療に漢方薬が使われています。病院で処方された漢方薬には、健康保険が使えるのでその点もメリットといえます。
また、漢方専門薬局でも漢方を処方してもらうことができます。病院よりも、時間をかけて相談できる点や漢方のスペシャリストに生薬を調合してもらえる点がメリットです。ただし健康保険は使えません。
漢方を処方してもらうときの診察
漢方は、「証(しょう)」とよばれる体質や体力、病気への抵抗力の強さと、「気・血・水」で表される不調や症状の原因から、自分にぴったりあった漢方薬が処方されます。
その人にぴったりあった漢方を導き出すために、「四診(ししん)」という診察方法が使われることがあります。「四診」では、具体的には次の項目を診ます。
望診(ぼうしん)
顔色や表情、態度、姿勢、体型をみます。舌の状態が含まれることもあります。
聞診(ぶんしん)
声、話し方、咳や痰の様子、呼吸音を診ます。体臭や口臭を嗅ぐこともあります。
問診(もんしん)
自覚症状や、これまでにかかった病気、食べ物の好み、ライフスタイル、仕事、月経の様子などを診ます。
切診(せっしん)
脈と腹部を診ます。
漢方を一定期間飲み続けて、月経前症候群(PMS)解消する
漢方には、効果が表れるまでに時間がかかると耳にしたことがあると思います。漢方には、飲んですぐに効くタイプと、一定期間飲み続けて、体質を改善して症状を改善していくタイプの漢方薬があります。
一定期間飲むことで、月経前症候群(PMS)に効果があるとされ、よく処方されている漢方には、次の3つがあります。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、下記ような体質で、生理前に次のような症状がある人に適しています。
- 体力がない
- 色白である
- やせていて、きゃしゃな体つきである
- むくみやすい
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加味逍遥散(かみしょうようさん)
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、下記ような体質で、生理前に次のような症状がある人に適しています。
- 体力は平均的
- 月経前症候群(PMS)のさまざまな症状がある
- 疲れやすい
- 冷えのぼせ
- 眠れない
- 汗をかきやすい
- 背中に悪寒がしたり、急に暑くなったりする
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、下記ような体質で、生理前に次のような症状がある人に適しています。
- 体力がある
- 比較的がっちりした体格
- ニキビができやすい
- 赤ら顔である
- くまができやすい
- 子宮内膜症がある
- 痔になりやすい
- のぼせやすい
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漢方薬は、体質に合ったものでないと効果がありません。1ヶ月程度服用してみて症状の改善等の効果が見られない場合は、その漢方が自分の体に合っていないと考えられます。別の漢方に替えてみましょう。
月経前症候群(PMS)の症状がある時に飲む、漢方
月経前症候群(PMS)の症状がある時につかう漢方には、次の漢方があります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、生理前に下記の症状がでている時に効果があります。
- ニキビができる
- 肌荒れ
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桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、生理前に下記の症状がでている時に効果があります。
- 甘いものが異常に食べたくなる
- イライラする
- 便秘になる
- お腹から何かが突き上げるような感じがする
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安中散(あんちゅうさん)
安中散(あんちゅうさん)は、生理前に下記の症状がでている時に効果があります。
- 胃痛
- 神経質になっているとき
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呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、生理前に下記の症状がでている時に効果があります。
- 胃痛
- 冷え症
- 頭痛
香蘇散(こうそさん)
香蘇散(こうそさん)は、生理前に下記の症状がでている時に効果があります。
- くよくよしている